プラズマ窒化の革新技術 ラスター窒化(旧名称”アトム窒化”)
拡散層のみ形成するため化合物層の研磨除去不要
化合物層を形成しないので、工具や金型の複雑形状にも対応できます。
ラスター窒化とは?プラズマ窒化との違い
ラスター窒化とは、プラズマ窒化の一種で窒素原子を用いた革新的な窒化法です。使用するガスは純窒素(N2)を使用し、通常のプラズマ生成法では困難であった窒素分子まで解離させ、大量生成を実現します。化合物はなく、金属表面の光沢を維持させます。そのため、磨くことなく窒化後にPVDコーティングを行うことができます。(ラスター窒化後のPVDコーティングの密着力1.2~1.3倍以上に向上)
プラズマ窒化は、窒化性ガスに窒素、水素を用い、真空中のグロー放電を利用した窒化法です。製品はグロー放電により得られた窒素イオンと水素イオンを利用し窒化されます。プラズマ窒化は、金型や精密機械部品などに幅広く採用されています。
ラスター窒化は、「処理時間が長い」、「脆化層が生成される」といったガス窒化の欠点を補うために開発された技術です。
ラスター窒化の特長
①窒化表面は拡散層のみ→仕上がり面粗度が良く表面は光沢を保つ低温処理
従来の窒化処理方法では、脆い化合物層の形成を回避することが困難であるため、化合物層を研磨除去する必要がありました。しかし工具や金型は複雑形状であるため、研磨除去は困難です。
ラスター窒化は化合物層(Fe4N、Fe3N、CrN等)を形成せず、靭性に富む拡散層のみを形成します。
化合物層を研磨除去する工程が削減できるため、コスト削減に寄与できます。
ラスター窒化(低温処理)は光沢を保つ
未処理
ラスター窒化低温
従来窒化
②狭いスリット・細孔内面への窒化が可能
スリット幅1mmの内面にラスター窒化を施した結果、エッジから20mm入った部分でも硬さが保たれています。
③丸刃や切断用刃など、刃物への窒化が可能
医療用刃物の高性能化
切れ味低下の要因
- ・刃先の摩耗などによる変形
- ・刃側面への体液などの付着
刃先の硬さの向上・靭性の維持および体液などの付着防止(撥油性の付与)
④ステンレス材への窒化は「耐食性維持!」
SUSはCr酸化物の不動態化被膜でバリアされていて窒化がされにくい…
真空下で不動態化被膜を壊し、窒化を行う
従来窒化
従来窒化は窒化化合物層ができるため
耐食性Down↓
ラスター窒化
ラスター窒化は化合物層がなく、不動態被膜(Cr酸化物)が再生成
耐食性はそのまま維持される!
(塩水噴霧試験97時間 問題なし)
⑤金型の離型性が向上
ラスター窒化 | 従来窒化 | 従来窒化+化合物層の除去 |
---|---|---|
化合物層:なし | 化合物層:あり | 化合物層:なし |
表面状態:金属 | 表面状態:化合物層 | 表面状態:金属 |
窒化処理後は窒素原子に覆われた安定な金属表面となり、樹脂との親和性が少なく、離型性に富む。 | 化合物層が形成され、表面が荒れているため樹脂などが付着し易く、離型性が悪い。 | 化合物層の除去後の金属表面は酸化され易く、樹脂と親和性があり、離型性が悪い。 |
実例1 キャビティ用金型の離型性向上効果
- 金型材:NAK80
- 樹脂材料:ポリカーボネイト
離型性 | 向上! 製品の光沢も増加 |
---|---|
キャビティの傷の発生 | 無し |
キャビティ内面のくもりの発生(従来は数%) | 0.29% |
ゲート残りの発生 | 無し |
製品不良品率:従来10%から0.3%に減少!
実例2 コップ成形用金型の離型性向上効果
- 金型材(4個取り用):NAK80
- 樹脂材料:ABS
従来:
3回成型するごとに離型剤の塗布が必要
ラスター窒化処理後:
離型剤を用いることなく、20万個の良好な成形を達成!
ラスター窒化処理日程表
名称 | 処理内容 | 曜日 | ||||
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
ラスター | 高温処理 | ○ | ○ | |||
ラスターL(ロウ) | 低温処理 | ☆ | ☆ | |||
ラスターW(ダブル) | 2回処理 | ☆ | ||||
ラスターS(エス) | SUS向け | ☆ | ☆ | |||
ラスターNEXT(ネクスト) | 超硬向け | 未定 |
※☆は受注量により処理日を決定します。都度、お問い合わせください。
課題解決事例
ラスター窒化に関する課題解決事例を紹介します。
複合硬化処理がおすすめ!
オカネツではラスター窒化とPVDコーティングによる複合硬化処理をおすすめしております。
ラスター窒化を下地に施すことで、コーティングのみの時と比べて金型や切削工具の寿命が数倍伸びます。
ぜひ一度お試し下さい!
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